大判例

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福岡地方裁判所 昭和50年(行オ)1号 判決

閉鎖登記簿上の住所

佐賀市高木瀬町大字高木五八番地

送達場所

福岡市博多区上呉服町五の一六九

再審原告

株式会社藤工社

右代表者代表取締役

吉田喜一郎

福岡市東区馬出一の八の一

再審被告

博多税務署長

石橋敏雄

右指定代理人

馬場宣昭

高田民男

本田義明

大神哲成

小柳淳一郎

江崎福信

主文

一  本件再審の訴を却下する。

二  再審訴訟費用は再審原告の負担とする。

事実

再審原告は、「福岡地方裁判所が同庁昭和二九年(行)第二三号法人税更正決定取消請求事件について昭和三一年七月五日言渡した判決を取消す。再審被告が再審原告に対してなした昭和二二年事業年度法人税更正決定はこれを取消す。再審訴訟費用は再審被告の負担とする。」との判決を求め、再審被告指定代理人らは主文同旨の判決を求めた。

再審原告において陳述した請求原因は別紙記載のとおりであるが、その要旨は、再審原告の昭和二二年事業年度法人税は当時すでに納付ずみで滞納なきにも拘わらず、再審被告は訴外株式会社西日本軽車輛製作所が納付すべき同年度法人税を誤つて再審原告に対し法人税更正決定をもつて賦課処分をなした。右処分は違法であつてこの点を看過した前記確定判決は民事訴訟法四二〇条九号に規定する判決に影響を及ぼすべき重要なる事項につき判断を遺脱したるときに該当する、というにある。

再審被告指定代理人らは、

1  民事訴訟法(以下民訴法という。)四二〇条一項但書によると、再審の訴は当事者が上訴によつて主張した事由、または知つて主張しなかつた事由に基づいて提起することができず、右の再審事由を知りながら上訴によつて主張しなかつたときの中には、当事者が結局上訴をしなかつた場合を含み、この理は確定判決が本案判決たると訴訟判決たるとで異なるものではないところ、再審原告は原審において、本件再審事由として主張しているその要旨と同一の事由を既に主張しており、しかも本件確定判決である福岡地方裁判所昭和二九年(行)第二三号事件は昭和三一年七月五日に判決の言渡しがあり同年八月三日に控訴期間満了により確定しているのであるから、再審原告の主張する民訴法四二〇条一項九号の判断遺脱について再審原告は右原判決送達時には当然これを知つていたもの、あるいは知り得べきであつたものということができるから、本件再審の訴は民訴法四二〇条一項但書の規定により許されず、不適法である。

2  また、右確定判決は前記のとおり昭和三一年八月三日に確定しているので、原判決に対する再審の訴は民訴法四二四条三項により確定の日より五年以内、すなわち遅くとも昭和三六年八月三日までに提起しなければならないのに、本件再審の訴はこれを徒過して提起されたものであるから、民訴法四二四条三項に違反し不適法である。

3  よつていずれにしても本件再審の訴は不適法であるので却下されるべきである。

と、述べた。

理由

一、本件再審の訴の対象である福岡地方裁判所昭和二九年(行)第二三号法人税更正決定取消請求事件の判決は昭和三一年七月五日に言渡され、遅くとも同年八月三日には確定していること、本件再審の訴は昭和五〇年六月三日に提起されていること、ならびに、再審原告は前訴において本件再審事由として主張しているその要旨と同一の事由をすでに主張していたこと、以上の事実はいずれも当裁判所に顕著である。

そうすると本件再審の訴は再審被告の主張する理由と全く同一の理由により民訴法四二〇条一項但書および同法四二四条三項により、いずれにしても不適法というべきである。

二、よつて本件再審の訴は不適法としてこれを却下し、再審訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 権藤義臣 裁判官 簑田孝行 裁判官 郷俊介)

別紙

本件の再審請求は民事訴訟法第四二〇条九号の規定によるものでその事由は次の通りであります。

一、籐工社に代位して決算報告書(御庁昭和四三年(行ウ)第一〇三号事件以降別件と云う)の(乙第三〇号証)と確定申告書と共に金四一八円也(別件申第三号証の四項の小為替受領証書)の通りを博多税務署へ送金納付した処博多税務署長は職権で金九三七円に更正加税したので籐工社はそれを確認して全額を送金納付した事実は(別件申第三号証三項の小為替受領証書)の通りであります右の他に籐工社の昭和二二年度の法人税のなき事は国税徴収法の定める処によりて明白であります。

二、昭和三三年二月頃元博多税務署法人係長力丸金亮氏は訴外株式会社西日本軽車輛製作所(以降西日本軽車輛と云う)の社長中島吉蔵氏へ「私が博多税務署に勤務中職務上署長に代りて昭和二二年度か二三年度の法人税を更正課税するに当りて籐工社が西日本軽車輛の屋上へ大きな看板を掲げていたので軽車輛の製作を籐工社の事業と誤認して西日本軽車輛へ課税すべき法人税を籐工社へ課税したので問題になつて困つております」と述べられた由で誤認課税事実の真相が明らかにされました。

三、籐工社は昭和二〇年六月二〇日福岡市綱場町一番地にて戦災で焼失して無一物となつて休業しておりましたが法律上そのまま放置しておけないので昭和二一年に至りて福岡市西堅粕八九六西日本軽車輛方へ移転登記をさせてもらいましたが所で営業は一日もしておりません。

昭和二二年一月より佐賀市唐人町一七にて籐製品児童乗物類の販売業を再開したのでその決算報告を登記上の管轄である博多税務署へして送金納付した訳であります。

昭和二四年六月二六日福岡市西堅粕八九六西日本軽車輛方より佐賀市唐人町一七へ移転登記も完了したので昭和二四年度以降の国税は佐賀税務署へ納税しました。

移転登記が遅延したのは

1 当時登記所に代書人がいなかつた事と登記官も不在勝であつた。

2 物資統制令によりて一枚の用紙も自由購入が出来なかつた。

3 佐賀市より福岡へは日帰りは出来なかつた。

4 白米を持参せねば旅館は宿泊を拒否した。

5 旅行証明書なくして白米を所持しておれば警察官は理由を問わず所有米全部を没収したので佐賀市より福岡迄の出張に警察署長の旅行証明書の必要があつた右の如き実情によりて移転登記遅延による登記法違反は不問にされました。

四、(別件乙第二四号証の一)は籐工社のものであります。

(別件乙第二四号証の二)は西日本軽車輛と籐工社を混同したものであります。

1 (一)の電話番号〈東〉一四九四番は籐工社が福岡市綱場町にて昭和二〇年六月一九日迄使用していた戦災電話であります。

2 法人番号一〇一二は籐工社のものであります。

3 佐賀市唐人町一七は昭和二二年一月より籐製品児童乗物等の物品販売業を再開した籐工社の所在地であります。

別件乙第二四号証の二の

1 福岡市西堅粕八九六は西日本軽車輛の所在地で所では西日本軽車輛の工員が軽車輛の製作をしておりました。

2 法人番号二四二は西日本軽車輛の法人番号であります。

3 事業種目軽車輛製は西日本軽車輛の事業であります。

昭和二二年の時点で軽車輛の製作権を有する者は昭和一三年度の生産実績者によりて結成された各府県単位の軽車輛工業組合(統制令によりて組織された統制組合)員以外の者の製作は法律によりて禁止されておりました。

軽車輛の製作権を有しない籐工社が軽車輛を製作したとして認定課税した(別件乙第二四号証の二)は誤認課税。

事実を立証するものであります。

五、籐工社は昭和二七年四月頃福岡市住吉上横田町九一五柳橋東詰へ福岡営業所を開店した処博多税務署の徴収係員が来店して籐工社の昭和二二年度の法人税が滞納になつておると告げられたので籐工社取締役福岡営業所長木原秀行と吉田が回を重ねて博多税務署に出頭して籐工社の昭和二二年度の法人税は中村税理士が籐工社に代位して税法の定める計算で算出した税額を決算報告書確定申告書と共に送金納付した処博多税務署長は職権で更正課税したので籐工社はそれを確認して全額を送金納付しましたと述べ、(別件申第三号証)の三項四項の原本を提示して抗議して調査して貫つた結果籐工社の昭和二二年度の法人税は納税済である事実が判明したので署長直税課長総務課長法人係長等が協議された結果税は博多税務署長が「徴収の執行を停止処分として」処理しますから今後徴収に行く様な事はありませんと釈明されたものであります。籐工社が納付した税又は関知しない税の徴収を目的として全商品の差押を執行して営業を停止させたので籐工社の吉田と木原は証拠書類を提出して抗議したのに対し被告当事者は当該国税の課税の内容を明示せず納税義務の確認をさしめずして強制徴収した事実は国税徴収法その他の国法に反して職権を乱用して善良なる国民の営業権竝に財産所有権を侵害したものであります。

六、福岡国税局徴収課整理係長藤井正春(以降藤井係長と云う)が「当局は佐賀税務署長の委託によりて国税の滞納処分するもので私は上司の指示により職務を執行するものであります」として籐工社が納付した税又は関係なく関知しない国税について課税基本(課税の内容事実)を明示せず納税義務の確認を得さしめずして原処分庁である佐賀税務署備付けの文書にない国税の徴収を目的として職権を乱用して籐工社各営業所の全商品の差押を執行して営業を停止させて事実は御庁昭和四三年(ワ)第一四二〇号事件(以降(ワ)号と云う)の(乙第八号証)の昭和二九年三月一六日小倉営業所の全商品の差押(乙第九号証)の昭和二九年五月二六日福岡営業所の全商品の差押(乙第一〇号・一一号証)の昭和二九年(七月一六日・八月二日)熊本営業所の全商品の差押右の内熊本国税局職員が熊本営業所の差押を執行したのは昭和二九年三月一一日藤井係長が福岡国税局長の名による(滞納処分引継書)を熊本国税局へ発送した事によるものである事実は((ワ)号乙第五号証)の(滞納処分引継取消書)の内容によりて明白であります。

藤井係長が強制徴収した国税の内昭和二二年度の法人税は納期日を昭和二四年二月二八日としているので徴収の目的で全商品の差押を執行した昭和二九年三月一六日五月二六日八月二日の時点では時効によりて徴収権が消滅していた事は国税徴収法の定める処によりて明白であります。

七、前述の如く西日本軽車輛の昭和二二年度の法人税である事が明らかであり時効によりて徴収権が消滅した税を職権を乱用して籐工社より強奪した事実は国税徴収法に反して善良なる国民の営業権竝に財産所有権を侵害したもので憲法にも反した不法徴収であります。

終戦後の占領下に於てはマックアーサー司令部の提示によりて確定申告した税額を署長の職権で倍額程度に更正課税したものの如くであるが本件の如く職権で認定課税した他社の法人税を職権で強制徴収した例はないと信じます。

昭和二二年度の法人税を徴収権が消滅した昭和二九年以降迄放置していた事実は適法に課税し適法に徴収したものでない事を立証するものであります。

八、昭和二四年度以降籐工社へ国税を課税し徴収する公権力を有する者は当時の佐賀税務署長の他にない事は税法の定める処によりて明白であります然るに籐工社より国税を強制徴収した当務者は次の通りで博多佐賀両税務署福岡国税局職員が 巴になつて徴収した事実は次の通りで不当徴収事実を立証するものであります。

昭和二七年一二月 四日 一万円 松本喬

〃 〃 一九日 一万円 久保山勲

〃二八年 一月二七日 二万円 久保山勲

〃二九年 三月三一日 五万円 藤井正春

〃 四月一〇日 三万円 藤井正春

〃 四月二〇日 五万五千円 鈴木春次

〃 五月 一日 三万円 藤井正春

〃 五月二六日 三万五千円 金丸徹

〃 八月 三日 拾万円 藤井正春

合計 参拾四万円也

右は籐工社が納得して納税したものではなく強奪又は詐取されたものであります。 以上

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